カンチェンジュンガ・ジャヌー
2012/11/02-11/27

 11/02 カトマンドゥ→ビラトナガール→バサンタブル
ビラトナガールの便は早朝のフライトが終り一段落してからである。運賃は131j(ネパール人71j)30分で着陸。空港を出ると、チャーターしたミニバンが待っていた。バサンタブルまで4時間20分、150j。昔はダーランから歩いたというから5日程短縮されたことになる。ホテルに入る。
 
 11/03 バサンタブル→チャウキ(2690m) 徒歩6時間30分
これから先も道路は延びていて、ローカルバスが走っている。ショートカットした道を人々は歩いている。ネパールの手漉き紙の原料となるロクタ(ミツマタ)が切り開かれた土地に植えられていた。1時間程でデオラリに着く。チェックポストがある。ここで道は二手に分かれ、左手はマカルー方面で車道があり5時間程でカンドバリに着く。右手がトレッキングルートである。ティンズレの丘の上にはヒンズー教の寺があって信者たちがお供えの動物をつれて歩いている。ジャングルと草原のカルカの道をのんびりいく。遠くジャヌーが木々の向こうにあらわれた。
 
 11/04 チャウキ→グファポカリ(2890m) 徒歩4時間30分
5時30分外に出るとマカルー、チャムランが赤く染まっていた。霜の降りた草原に三脚を構えた。寒かった。今日の行程は半日、午後は休みになるので足が速まる。この古いトレッキングルートは今は歩く人も少なく、タブレジュンまで飛行機か車で移動しスタートするトレッカーが殆どだろう。がグファポカリは是非寄りたいポイントだ。今日からテントを張ってもらう。
 
 11/05 グファポカリ→チャドラバッティ  徒歩6時間40分
グファポカリに投影するマカルー、チャムランを撮影するために早起きをするが良い場所が見つからない。池の周りに柵が出来ていて昔の写真のようにはいかない。
丘を登るとチェックポストがある。山の説明をしてくれる。今日の予定はグルジャガオンであったが、その後の行程を考えチャドラバッティまで下り、民家の庭にテントを張った。
 
11/06 チャドラバッティ→トサロ手前の河原(750m位) 徒歩7時間30分
落ち葉を踏みながら松林の道を歩く。ネスンを過ぎると竹林が覆っている。段々畑には刈り取り前のコードや米が朝の光を受けて黄金色に輝いている。
リンブー族の老人からセワロー(リンブー族のナマステ)と声を掛けられ、それからは会う人ごとにセワローを連発、喜んで返事を返してくれる。ドバンまで下るとタブレジュンから車道が繋がっていて物資が運ばれていた。人々の活気がある。グンサコーラの左岸を行き河原でテントを張る。ポーター達は木陰でシートをかぶって寝ていた。
 
 11/07 トサロ手前→シヌワ(---m) 徒歩5時間30分
川沿いから山道に入る。ガイドはバンガルコバト(猿の道)だという。我々はバンガル(猿)になった。林の中はカルダモンに覆われている。タブレジュンとの分岐を過ぎるとミルトン。昔ながらの萱葺き屋根の家が並んでいる小さな村だ。標高は890m、気温は30℃を越える。タブレジュンを起点とするトレッキングルートでは何組かのトレッカーと出会った。道も少し良くなった。シヌワにチェックポストがある。片言のネパール語で話がはずむ。今日も河原で野宿。
 
 11/08 シヌワ→タペトク(1322m) 徒歩5時間40分
小沢を渡って崖を上るとタワ、蜂蜜の木箱が屋根の上に10ばかりのっていた。500rs/500cc
チルワの手前でカンチェンジュンガ保護区のゲートをくぐった。ジャングル地帯を抜けて瓦礫地帯に入るところで突然岩の間から山猫が飛び出してきた。山靴に身体を撫でつけるようなしぐさをしてないている。親猫とはぐれたのかしばらく足元を離れなかった。タペトクにチェックポストがあるが、人がいない。ここでボツにする。
 
 11/09 タペトク→ガイヤバリ(2150m) 徒歩6時間
吊り橋で右岸に渡る。石畳の良い道が続いている。この辺りもカトマンドゥで売っている地図と違っていて再び吊り橋を渡ると直接セカトムに出る。大きな岩にへばり付くように小屋が一軒あった。タモールナギとグンサコーラが合流する地点だ。この後グンサコーラに沿って上流を目指す。しばらく進むとジャパンタールという広い草原にでる。キャンプ適地である。フランスからのトレッカーが10名ほど昼食をとっていた。グンサから上はとても寒いと言っていた。足板の片側が外れた吊り橋や手すりが延びてしまった吊り橋を何とか渡りガイヤバリに着いた。夜になって山火事がおこり心配をしたが、朝には消えていた。 
 
 11/10 ガイヤバリ→タンゲム(2410m) 徒歩5時間
夜中に霧雨、朝一面霞んでいるので心配する。10時アムジラッサに着く。この先水場がないのでここで昼食になる。天気も回復しているので頭を洗ったり、洗濯をしたり
崩れた斜面を横切り、林を抜け竹林を過ぎるとヤクカルカのタンゲムにつく。ヤクミルクでつくったチョルピー(チーズのような、乾燥して固く茶色くなったものが店で売っている)をかじりながら、ヤクミルクのチャイを飲む。
 
 11/11 タンゲム→フォレ(3215m) 徒歩6時間20分
テントが霜で真っ白になった。(3.8℃)急坂を上りきるとレットパンダが生息するというギャブラに出る。草原と低灌木の斜面が広がっていた。あちこちで斜面が崩れそこを横切らなければならないところがある。フォレに入る手前では斜面の上から川底まで一気に崩れていてそこを15分程歩かなければならない。上を見ると大きな岩が今にも落ちそうだ。フォレに入るとカルカや小屋が点々とあるが人がいない。20分程歩いてやっとゴンバについた。近くのロッジの庭にテントを張る。
 
 11/12 フォレ→グンサ(3410m) 徒歩2時間
このロッジは村の入り口だった。その奥に民家やゴンバ、学校などが立ち並ぶ大きな村が広がっていた。今日はグンサまでなので休み休み歩くが、早々に着いてしまった。チェックポストに寄り、隣のロッジの庭にテントを張った。ティハールのお祭りで下の村からやってきた若い踊り子たちがいて音楽に合わせて延々と踊っている。村の人たちが集まりお金を寄進する。夜遅くまで続いていた。そして雪となった。テントはネパール製、生地は薄いし、ポールも弱い。夜中に起きて雪を払うことになった。
 
 11/13 グンサ 停滞
が、12時前には雪がやんで星が出ていた。寒くなった。朝気温は-10℃、テント内-7℃、積雪10cm
民家も雪に包まれて朝日に輝いている。今日は停滞日の予定だったので予定通りだが、これから上はどんな状態なのか心配になる。カンバチェンでは1mも積ったらしいとの話が伝わってきた。ここから引き返すのか。さてどうしよう。
 
 11/14  グンサ→カンバチェン(4150m) 徒歩5時間
気温-9℃、テント内-7℃。雪も解けていないがカンバチェンに行くトレッカーが他にもいるので出掛けてみようと決断。踊り子たちは我々の出発のためにダンスで送ってくれた。600rs寄進
歩きだしてみると積雪はさほどでもなく、林の中などは殆どなかった。地図やガイドブックにある道は右岸にあるが崖崩れのトラバースが長い。雪の直後なので左岸に出来た新しい道を行くことにする。
カンバチェンはタンジュンコーラとグンサコーラの合流する広々としたところにある。
 
 11/15 カンバチェン→ジャヌー北壁BC→カンバチェン 徒歩4時間
気温-12.5℃、シャルブーカルカに上がるかジャヌー北壁BCに行くか迷ったがやはりBCにする。
ジャヌー北壁(小西著)を読みながら来たので見る景色に親しみを感じる。少し戻り橋を渡って東に向けて上って行く。ヤクカルカになっているのでトレースがはっきりしている。ジャヌーグレーシャーのモレーンを行く。8時30分ジャヌーに背光が現れた。良い位置になるよう走り回りカメラにおさめた。カルカに日射しがあふれ身も心も暖まっていくのを感じた。雪崩が発生し、雪煙が朝日に輝いた。
 
 11/16 カンバチェン→ロナーク(4790m) 徒歩5時間30分
カンバチェンにいる村人は殆ど今日ヤクを連れてグンサやフォレに降りてしまう。ガイドが交渉してロナークのカルカ小屋の鍵を借りていく。ガイド、ポーターはテントを持っていないので小屋が開いていないと泊ることが出来ない。カンチェンジュンガ北壁BCのキャンプは諦めざるを得ない。
ルンタのかかる丘を目指し、その後グンサコーラの右岸の道を上って行く。緩やかな上りだ。左手から全面真っ白に凍った滝が現れた。その先1時間程でラムタンのカルカになる。石積みの壁だけの小屋がある。ここで昼食をためらったので、シャリバテ。昼食はロナークで2時半。10名程のグループが上がってきてテントを張ったので賑やかになる。
 
 11/17 ロナーク→パンペマ(カンチェンジュンガ北壁BC)→ロナーク 徒歩7時間30分
-12℃まで下がる。いよいよパンペマにに向けて歩きだした。広い草原に東に延びる緩やかなトレースがある。左手の斜面から大きな岩が落ち裂けている。地面には亀裂が入っている。これは2011、ダージリンを震源とした地震の影響だとガイドは話した。山崩れの斜面のトラバースがある。カラカラと自然落下している。ここで半分。背後にシャブルー、前方にネパールピーク、テントピークがある。カンチェンジュンガ、ヤルンカンはまだ見えない。12時BCについた。カルカ小屋が一軒、その前にルンダが張られていた。誰もいない。カンチェンジュンガグレーシャーが山に駆け上がる先にカンチェンジュンガ、ヤルンカンのピークが連なって見下ろしていた。静寂な空間が我々を包んでいる。
 
 11/18 ロナーク→グンサ(3410m) 徒歩8時間
-12℃。今日は昼食をとらずにグンサまで直行することにする。寒さでピッチが上がる。ラムタンカルカに着く頃身体も暖まってきた。ヤクも冬に備えて下山。カンバチェンに11時、ここから帰りは旧道を下る。橋を渡らずに右岸の斜面を上って行く。標高が上がるにつれ対岸のジャヌーが大きく見える。道幅も広くしっかりしている。ガレ場のトラバースは予想以上に長かった。上部も広い範囲で崩れ、下は川まで落ち込んでいる。安定している時ならば問題はない。庭園のような草原を抜けて吊り橋を渡って上りに使った道に出る。ここからも長かった。
 
 11/19 グンサ→セレレ(4180m) 徒歩6時間
-7℃、寒く感じない。村の南端から発電所の導水管に沿って上がって行く。12日の雪が残っている。急登2時間で尾根に出た。ポーター達はグンサで食料購入をしたのでピッチが上がらない。セレレのオーナーが休んでいた。トレッカーが上がるのを見て、小屋を営業するためにグンサから上がってくるのだ。セレレの小屋はセレレコーラの水源に建っていた。西方にマカルーが見えていた。
 
 11/20 セレレ→ツェラム(3900m) 徒歩6時間50分
「ミルギンラからジャヌーが見たい」という思いが叶う日がきた。快晴。水音が聞こえる岩の上を上がって行く。急な岩場を振り返り振り返り上る。見えた。ジャヌーの頭が白く輝いている。上る、振り返る。厳つい肩が現れる。上る、振り返る。峠に着く前にシャッターを何回押しただろうか。ミルギンラはペンキの剥げた小さな看板が一つあっただけだった。ルンダが風にたなびいていた。しかしジャヌーがそこにあるだけで十分だった。シネラプチェ・ラを越えて青と白色の2つの池を下に見て、ツェラムに直接下った。この道が急坂のうえ砂利で滑り疲れた足には堪えた。
 
 11/21 ツェラム→トロンタン(2980m) 徒歩4時間
ツェラムからヤルン氷河をつめてBCへ往復するには3日必要だ。今回は初めから予定していない。いよいよ下山。川に沿って足を速める。苔むした岩、緑の木々、白濁した流れが美しい。人一人会うこともない。静かな山道だ。トロンタンに昼前に着いて午後は暖かい日射しの中ゆっくりと過ごす。
 
 11/22 トロンタン→ヤンプデン(1692m) 徒歩8時間
川を渡って林の中を上って行く。振り返れば尾根の向こうにカンチェンジュンガ山群が見えるが、もう随分遠くに見える。下山に見る山は少し寂しい。ラシダ・ラを越えると突然山全体が崩れていて道がない。これも地震の影響らしい。踏み跡を辿ってラセバンジャンに着く。広々とした草原に小屋が一軒。正面にジャヌー。単調な下り道が延々と続く。夕方になってヤンプデンのロッジに辿りついた。
 
 11/23 ヤンプデン→ケバン(1915m) 徒歩6時間
ヤンプデンの下村にチェックポストがある。が、人が居ないのでそのまま通過。順調に下って行く。ガンティシネマバンジャンという峠越えがある。バンジャンはラより低い峠だが急な山道だった。そしてもう一つヤクチェナバンジャンの峠を越えてケバンに着いた。学校に庭を借りてテントを張る。
 
 11/24 ケバン→カンディベ→タルプ(2000m) 徒歩6時間、車2時間
ケバンは大きい村だ。家々は白壁に土台まわりを赤く塗り、萱葺き屋根で落ち着いた雰囲気である。収穫の終わった段々畑はあぜ道が綺麗な模様を描いている。ドバンまで下ってくるとミカンがあった。久しぶりの果物の味だった。ヤンプデンのロッジのオーナーが家族を連れて一緒に下っている。我々の車のチャーターを世話してもらったのだがついでに彼らもカトマンドゥに出掛けるという。カンディベまで車が迎えに来てくれた。タプルのっロッジに着いたのは暗くなっていた。
 
 11/25 タルプ→イラム 車4時間30分
車はしばらく悪路を走り、タブレジュンからの道と合流して舗装道路になった。昼前にイラムの茶畑が広がる一番上にあるロッジに入った。
 
 11/26 イラム→バドラプル 車4時間
10時車で出発する。車窓の景色は全面茶畑が広がる。ダンクタの茶の工場に立ち寄る。少し分けてもらいたいと言うと、売ることはないのか値段がない。話をしているうちに2kgで1000Rsになった。このお茶はインドに輸出されダージリンティーとして世界に送られるのだとか。タライ高原に入っても茶畑は続いていた。これはチャイ(ネパールミルクティー)用のお茶になるらしい。標高は100mになった。カンチェンジュンガBCから5000m下ってきたことになる。
 
 11/27 バドラプル→カトマンドゥ 飛行機
曇り空になっていた。飛行機が離陸し雲の上に出た。そこにはカンチェンジュンガ、ジャヌー、しばらく飛ぶとマカルー、エベレストが雲の上に浮かんでいた。
 
 
 カンチェンジュンガはエベレスト、K2 についで世界第3位の主峰(8586m)を盟主に、中央峰(8478m)、南峰(8476m),西峰(ヤルンカン8505m)、ジャヌー(クンバカルナ7710m)の山群であり、ネパールの東端インドシッキムとの国境に位置する。
トレッキングはアプローチが長く、日数もかかり、ロッジもほとんどないことから一般的ではない。
 今回の計画はジャヌー北壁に挑戦した山岳同志会(小西政継隊長)のキャラバンルートをたどりジャヌー北壁BC、カンチェンジュンガ北壁BCを往復し、ミルギン・ラを廻りジャヌー南壁、カンチェンジュンガ南壁を訪ね、その後茶畑のひろがるイラムに出た。メンバーは我々2名とガイド1名、ポーター2名をつれてのキャンピングで簡素なトレッキングの記録である。

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